#metime

本と、朝ごはんと、私の好きなもののハナシ

もしもし下北沢/吉本ばなな

「ゆっくりゆっくり歩くのよ」

 

後に続く言葉は、

「私たちには時間だけはたっぷりあるんだから」みたいな感じだったと思います。

 

詳しい話もあんまり覚えてないけど、たしかお父さんに先立たれた親子が、

悲しみから立ち直りながらそれぞれの生き方を見つけていく

というようなお話だったと思います。

主人公の女の子は下北沢の小さい洋食屋さんの料理人になるんじゃなかったかなあ…

 

全体の記憶としてはこの程度ですが、主人公のお母さんが言った、

「ゆっくりゆっくり歩くのよ」という言葉は鮮明に覚えています。

 

時間がたっぷりあるというのは、

大学院生の私の状況をぴったりと言い表しています。

時間があるからこそ、ほかの人と自分を比べたり、

何をしてるんだろうって考えてしまったり、あれもしなきゃこれもしなきゃとか、

漠然と将来について考えて焦ってしまったり。

時間がなければ日々を送る間に忘れてしまうような些細なことが

延々と頭の中を巡って、焦燥感と、まだ何者にもなっていない自分の存在だけが

強調されてしまう日々。

 

そんな時にこの言葉をふと思い出しました。

 

ゆっくり歩いてもいいのか。

時間しかないけど、だからこそ道端の雑草を眺めたり、

空を見て雲の形で遊んだりもできます。

寄り道は時間のある人の特権だし、まだ自分が何者なのかわからないなら、

寄り道することで、早歩きで通り過ぎてしまう人が見過ごしたことだって

見つけられるかもしれません。

 

大学院に進むことを決めてからというもの、

就職して働き始めた周りの友人たちと自分の時間の進み方が違うような気がしていて、

取り残されてしまったような気がずっとしていましたが、

寄り道できる間に寄り道しておくのも大事かも、と思えるようになりました。

 

東京の地理には疎いので、今度は下北沢あたりを探索して

物語の舞台に詳しくなってから読み直したいなあ。